ファクタリング

ファクタリングに関わる法律 | 違法業者の見極め方

金融庁HPには、「ファクタリングは、債権を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」であると説明されています。公的機関が売掛債権の売却を認めているので、不安はないと思いますが、法的な根拠を知ることでより安心感が高まるはずです。

この記事では、ファクタリングに関わる法律をご紹介させて頂きます。

ファクタリング法的根拠

ファクタリングとは、ファクタリング業者(買い手)が、ファクタリング利用者(売り手)が保有する売掛債権等(対象債権)を、期日前に一定の手数料を徴収して、買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)です。

法的には買い手と売り手の間で対象債権の「売買契約(民法第555条)」が締結され、その売買契約に基づいて、売り手から買い手に対して債権譲渡が行われることになります。

そのような債権譲渡自体は、売り手と買い手との合意によって有効に行うことができますが、他方で、対象債権を買い手に譲渡したことを債務者(売掛先)に主張するためには、少なくとも、その売掛先に対して債権譲渡についての通知をする必要があります。

さらに、2者間及び3者間ファクタリングにおいて、対象債権の利害関係を有する第三者が存在する可能性があり(例えば、対象債権について二重譲渡を受けた者や、差押えや担保設定を行った者などが挙げられます)、それらの第三者との優劣関係も整理される必要があります。売り手と買い手が、そのような第三者に対しても債権譲渡を主張する(対抗する)ためには、

  • 売掛先に対する、確定日付のある債権譲渡の通知、又は、
  • 売掛先からの確定日付のある承諾

を行う必要があります(確定日付は公証役場で取得可能)。

また、上記2点に代えて、

  • 債権譲渡登記

による公示を行なって第三者に対抗できる地位を確保する方法もあります。

いずれの方法においても、対抗できる地位を確保した時点(確定日付の日付、又は、債権譲渡登記の日付)が、利害関係を有する第三者よりも先行していれば、第三者に対しても対抗できることになります。

なお、債権譲渡登記の方法によれば、必ずしも売掛先に知られずに第三者への対抗が可能になるので、2者間ファクタリング契約ではよく用いられます。

以上がファクタリング契約の核である債権譲渡に関する法律構成になります。

貸金三法への抵触が疑われる契約条件

ファクタリングは民法に基づく債権売買契約である事を説明しましたが、形式的ではなく実態として債権の真正譲渡性を確保する事が重要で、その判断基準は、当事者間の真に売買するという意思(買戻特約等がない、支配権の移転、経済的利益及びリスクの移転、会計上の資産切り離し等)があるかどうか、によるとされています。

ファクタリングでは、債権譲渡後の回収リスクは、買い手が負う事になっており、そのため額面通りの買取金額ではなく、手数料等が発生する仕組みになっています。

つまり、譲渡された売掛債権が回収不能になった場合、買い手が損失を被る事となります。

しかし、買い手の中には、自らの回収リスクを負わない、または低減させる条件を要求する悪徳業者が存在しますので、下の項目に1つでも当てはまる場合、利用を避けることをおすすめします。

貸金業法・利息制限法・出資法(貸金三法)への抵触が疑われる条件
  • 買い手に買戻請求権や償還請求権が付された契約
  • 代表者保証、第三者保証を付する契約
  • 第三債務者の債権等を譲渡担保とする契約

買戻請求権とは、売掛金が回収できなくなった場合、買い手が売掛債権を買い戻すよう売り手に請求できる権利の事です。

償還請求権とは、売掛金が回収できなくなった場合、買い手が売り手に売掛金を支払うことを請求できる権利の事です。

いずれにしても、買い手は回収不能リスクを負っていない事になりますので、貸金三法への抵触が問われます。

貸金三法に抵触する場合の2つの要件

仮に、ファクタリング契約が貸金三法に該当する場合、以下の2つの要件を満たす必要があります。

①ファクターは登録貸金業者であること

貸金業を行う場合は、登録を受けなければなりません。相手業者が登録業者かどうか登録賃金業者情報検索サービスを利用するか、財務局又は都道府県へ最新情報を確認しましょう。

②法定金利の順守

利息制限法では、金銭を目的とする消費貸借上の利息について、その利率の上限(制限利率)を定め、それを超える部分は無効であることなどを定めた法律です。

制限利率は、元本が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%です。制限利息を超えて支払った利息は、残存元本に充当され、元本が完済した後に支払われた金額は不当利得として、返還を請求できます。

ファクタリング手数料の金利(年率)への換算は、ファクタリング手数料率÷回収サイトx12で算出できます。以下、参考例です。

  • ファクタリング手数料:12%
  • 回収サイト(売掛金が入金されるまでの期間):2ヶ月
  • 金利換算=12%÷2ヶ月×12ヶ月=72%

一般的に、ファクタリング手数料を金利に換算すると、法定金利を超える利率になる可能性が高いので、仮に債権譲渡契約が貸金業に該当するとなった場合は、手数料の妥当性が争われることになると考えます。

個別案件の貸金三法への該当性については、総合的に判断されますので、金融法務を主たる業務とする法律事務所にご相談頂く事をお薦めいたします。

注意事項

ファクタリングの違法性が疑われる契約条件をご説明しましたが、その他参考情報として、以下のような項目が確認される場合は十分注意しましょう。

  1. 契約書を作らない、もしくは「債権譲渡契約(売買)」である事が定められていない
  2. 振込先口座が会社名義と異なる
  3. 会社の所在地がおかしい
  4. 固定電話を持っていない
  5. 手数料が高すぎる又は安すぎる
  6. 手続きが雑過ぎる

まとめ

ファクタリングは、法律で定められた要件に従って使えば、中小企業の資金繰りを支える重要な資金調達の1つの手段になります。

但し、契約条件によっては、貸金業への該当する可能性がありますので、個別案件は法律事務所にご相談される事をおすすめいたします。

また、ファクタリングは比較的手数料の高い資金調達手段なので、過度に利用すると資金繰りが回らなくなる恐れもありますので、計画をもって利用するように致しましょう。